3編01章05節01款

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民法第一編第二編第三編(明治29年法律第89号)

第三編 債権

第一章 総則

第五節 債権ノ消滅

第一款 弁済
第474条
  • [I] 債務ノ弁済ハ第三者之ヲ為スコトヲ得但其債務ノ性質カ之ヲ許ササルトキ又ハ当事者カ反対ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス
  • [II] 利害ノ関係ヲ有セサル第三者ハ債務者ノ意思ニ反シテ弁済ヲ為スコトヲ得ス

【参照】

第475条
  • 弁済者カ他人ノ物ヲ引渡シタルトキハ更ニ有効ナル弁済ヲ為スニ非サレハ其物ヲ取戻スコトヲ得ス

【参照】

第476条
  • 譲渡ノ能力ナキ所有者カ弁済トシテ物ノ引渡ヲ為シタル場合ニ於テ其弁済ヲ取消シタルトキハ其所有者ハ更ニ有効ナル弁済ヲ為スニ非サレハ其物ヲ取戻スコトヲ得ス

【参照】

第477条
  • 前二条ノ場合ニ於テ債権者カ弁済トシテ受ケタル物ヲ善意ニテ消費シ又ハ譲渡シタルトキハ其弁済ハ有効トス但債権者カ第三者ヨリ賠償ノ請求ヲ受ケタルトキハ弁済者ニ対シテ求償ヲ為スコトヲ妨ケス

【参照】

第478条
  • 債権ノ準占有者ニ為シタル弁済ハ弁済者ノ善意ナリシトキニ限リ其効力ヲ有ス

【参照】

第479条
  • 前条ノ場合ヲ除ク外弁済受領ノ権限ヲ有セサル者ニ為シタル弁済ハ債権者カ之ニ因リテ利益ヲ受ケタル限度ニ於テノミ其効力ヲ有ス

【参照】

第480条
  • 受取証書ノ持参人ハ弁済受領ノ権限アルモノト看做ス但弁済者カ其権限ナキコトヲ知リタルトキ又ハ過失ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキハ此限ニ在ラス

【参照】

第481条
  • [I] 支払ノ差止ヲ受ケタル第三債務者カ自己ノ債権者ニ弁済ヲ為シタルトキハ差押債権者ハ其受ケタル損害ノ限度ニ於テ更ニ弁済ヲ為スヘキ旨ヲ第三債務者ニ請求スルコトヲ得
  • [II] 前項ノ規定ハ第三債務者ヨリ其債権者ニ対スル求償権ノ行使ヲ妨ケス

【参照】

第482条
  • 債務者カ債権者ノ承諾ヲ以テ其負担シタル給付ニ代ヘテ他ノ給付ヲ為シタルトキハ其給付ハ弁済ト同一ノ効力ヲ有ス

【参照】

第483条
  • 債権ノ目的カ特定物ノ引渡ナルトキハ弁済者ハ其引渡ヲ為スヘキ時ノ現状ニテ其物ヲ引渡スコトヲ要ス

【参照】

第484条
  • 弁済ヲ為スヘキ場所ニ付キ別段ノ意思表示ナキトキハ特定物ノ引渡ハ債権発生ノ当時其物ノ存在セシ場所ニ於テ之ヲ為シ其他ノ弁済ハ債権者ノ現時ノ住所ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス

【参照】

第485条
  • 弁済ノ費用ニ付キ別段ノ意思表示ナキトキハ其費用ハ債務者之ヲ負担ス但債権者カ住所ノ移転其他ノ行為ニ因リテ弁済ノ費用ヲ増加シタルトキハ其増加額ハ債権者之ヲ負担ス

【参照】

第486条
  • 弁済者ハ弁済受領者ニ対シテ受取証書ノ交付ヲ請求スルコトヲ得

【参照】

第487条
  • 債権ノ証書アル場合ニ於テ弁済者カ全部ノ弁済ヲ為シタルトキハ其証書ノ返還ヲ請求スルコトヲ得

【参照】

第488条
  • [I] 債務者カ同一ノ債権者ニ対シテ同種ノ目的ヲ有スル数個ノ債務ヲ負担スル場合ニ於テ弁済トシテ提供シタル給付カ総債務ヲ消滅セシムルニ足ラサルトキハ弁済者ハ給付ノ時ニ於テ其弁済ヲ充当スヘキ債務ヲ指定スルコトヲ得
  • [II] 弁済者カ前項ノ指定ヲ為ササルトキハ弁済受領者ハ其受領ノ時ニ於テ其弁済ノ充当ヲ為スコトヲ得但弁済者カ其充当ニ対シテ直チニ異議ヲ述ヘタルトキハ此限ニ在ラス
  • [III] 前二項ノ場合ニ於テ弁済ノ充当ハ相手方ニ対スル意思表示ニ依リテ之ヲ為ス

【参照】

第489条
  • 当事者カ弁済ノ充当ヲ為ササルトキハ左ノ規定ニ従ヒ其弁済ヲ充当ス
  • (1) 総債務中弁済期ニ在ルモノト弁済期ニ在ラサルモノトアルトキハ弁済期ニ在ルモノヲ先ニス
  • (2) 総債務カ弁済期ニ在ルトキ又ハ弁済期ニ在ラサルトキハ債務者ノ為メニ弁済ノ利益多キモノヲ先ニス
  • (3) 債務者ノ為メニ弁済ノ利益相同シキトキハ弁済期ノ先ツ至リタルモノ又ハ先ツ至ルヘキモノヲ先ニス
  • (4) 前二号ニ掲ケタル事項ニ付キ相同シキ債務ノ弁済ハ各債務ノ額ニ応シテ之ヲ充当ス

【参照】

第490条
  • 一個ノ債務ノ弁済トシテ数個ノ給付ヲ為スヘキ場合ニ於テ弁済者カ其債務ノ全部ヲ消滅セシムルニ足ラサル給付ヲ為シタルトキハ前二条ノ規定ヲ準用ス

【参照】

第491条
  • [I] 債務者カ一個又ハ数個ノ債務ニ付キ元本ノ外利息及ヒ費用ヲ払フヘキ場合ニ於テ弁済者カ其債務ノ全部ヲ消滅セシムルニ足ラサル給付ヲ為シタルトキハ之ヲ以テ順次ニ費用、利息及ヒ元本ニ充当スルコトヲ要ス
  • [II] 第四百八十九条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス

【参照】

第492条
  • 弁済ノ提供ハ其提供ノ時ヨリ不履行ニ因リテ生スヘキ一切ノ責任ヲ免レシム

【参照】

第493条
  • 弁済ノ提供ハ債務ノ本旨ニ従ヒテ現実ニ之ヲ為スコトヲ要ス但債権者カ予メ其受領ヲ拒ミ又ハ債務ノ履行ニ付キ債権者ノ行為ヲ要スルトキハ弁済ノ準備ヲ為シタルコトヲ通知シテ其受領ヲ催告スルヲ以テ足ル

【参照】

第494条
  • 債権者カ弁済ノ受領ヲ拒ミ又ハ之ヲ受領スルコト能ハサルトキハ弁済者ハ債権者ノ為メニ弁済ノ目的物ヲ供託シテ其債務ヲ免ルルコトヲ得弁済者ノ過失ナクシテ債権者ヲ確知スルコト能ハサルトキ亦同シ

【参照】

第495条
  • [I] 供託ハ債務履行地ノ供託所ニ之ヲ為スコトヲ要ス
  • [II] 供託所ニ付キ法令ニ別段ノ定ナキ場合ニ於テハ裁判所ハ弁済者ノ請求ニ因リ供託所ノ指定及ヒ供託物保管者ノ選任ヲ為スコトヲ要ス
  • [III] 供託者ハ遅滞ナク債権者ニ供託ノ通知ヲ為スコトヲ要ス

【参照】

第496条
  • [I] 債権者カ供託ヲ受諾セス又ハ供託ヲ有効ト宣告シタル判決カ確定セサル間ハ弁済者ハ供託物ヲ取戻スコトヲ得此場合ニ於テハ供託ヲ為ササリシモノト看做ス
  • [II] 前項ノ規定ハ供託ニ因リテ質権又ハ抵当権カ消滅シタル場合ニハ之ヲ適用セス

【参照】

第497条
  • 弁済ノ目的物カ供託ニ適セス又ハ其物ニ付キ滅失若クハ毀損ノ虞アルトキハ弁済者ハ裁判所ノ許可ヲ得テ之ヲ競売シ其代価ヲ供託スルコトヲ得其物ノ保存ニ付キ過分ノ費用ヲ要スルトキ亦同シ

【参照】

第498条
  • 債務者カ債権者ノ給付ニ対シテ弁済ヲ為スヘキ場合ニ於テハ債権者ハ其給付ヲ為スニ非サレハ供託物ヲ受取ルコトヲ得ス

【参照】

第499条
  • [I] 債務者ノ為メニ弁済ヲ為シタル者ハ其弁済ト同時ニ債権者ノ承諾ヲ得テ之ニ代位スルコトヲ得
  • [II] 第四百六十七条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス

【参照】

第500条
  • 弁済ヲ為スニ付キ正当ノ利益ヲ有スル者ハ弁済ニ因リテ当然債権者ニ代位ス

【参照】

第501条
  • 前二条ノ規定ニ依リテ債権者ニ代位シタル者ハ自己ノ権利ニ基キ求償ヲ為スコトヲ得ヘキ範囲内ニ於テ債権ノ効力及ヒ担保トシテ其債権者カ有セシ一切ノ権利ヲ行フコトヲ得但左ノ規定ニ従フコトヲ要ス
  • (1) 保証人ハ予メ先取特権、不動産質権又ハ抵当権ノ登記ニ其代位ヲ附記シタルニ非サレハ其先取特権、不動産質権又ハ抵当権ノ目的タル不動産ノ第三取得者ニ対シテ債権者ニ代位セス
  • (2) 第三取得者ハ保証人ニ対シテ債権者ニ代位セス
  • (3) 第三取得者ノ一人ハ各不動産ノ価格ニ応スルニ非サレハ他ノ第三取得者ニ対シテ債権者ニ代位セス
  • (4) 前号ノ規定ハ自己ノ財産ヲ以テ他人ノ債務ノ担保ニ供シタル者ノ間ニ之ヲ準用ス
  • (5) 保証人ト自己ノ財産ヲ以テ他人ノ債務ノ担保ニ供シタル者トノ間ニ於テハ其頭数ニ応スルニ非サレハ債権者ニ代位セス但自己ノ財産ヲ以テ他人ノ債務ノ担保ニ供シタル者数人アルトキハ保証人ノ負担部分ヲ除キ其残額ニ付キ各財産ノ価格ニ応スルニ非サレハ之ニ対シテ代位ヲ為スコトヲ得ス
  • (6) 右ノ場合ニ於テ其財産カ不動産ナルトキハ第一号ノ規定ヲ準用ス

【参照】

第502条
  • [I] 債権ノ一部ニ付キ代位弁済アリタルトキハ代位者ハ其弁済シタル価額ニ応シテ債権者ト共ニ其権利ヲ行フ
  • [II] 前項ノ場合ニ於テ債務ノ不履行ニ因ル契約ノ解除ハ債権者ノミ之ヲ請求スルコトヲ得但代位者ニ其弁済シタル価額及ヒ其利息ヲ償還スルコトヲ要ス

【参照】

第503条
  • [I] 代位弁済ニ因リテ全部ノ弁済ヲ受ケタル債権者ハ債権ニ関スル証書及ヒ其占有ニ在ル担保物ヲ代位者ニ交付スルコトヲ要ス
  • [II] 債権ノ一部ニ付キ代位弁済アリタル場合ニ於テハ債権者ハ債権証書ニ其代位ヲ記入シ且代位者ヲシテ其占有ニ在ル担保物ノ保存ヲ監督セシムルコトヲ要ス

【参照】

第504条
  • 第五百条ノ規定ニ依リテ代位ヲ為スヘキ者アル場合ニ於テ債権者カ故意又ハ懈怠ニ因リテ其担保ヲ喪失又ハ減少シタルトキハ代位ヲ為スヘキ者ハ其喪失又ハ減少ニ因リ償還ヲ受クルコト能ハサルニ至リタル限度ニ於テ其責ヲ免ル

【参照】